失った代わりに得たもの 気の毒な娘だと、最初に思ったことはただそれだけ。 私を選んでもらえたのならば、私は子をなすというその仕事をこなすのみ。 そのはずだったのに。 娘の顔を見たとき、ただ純粋に力になってやりたいと思った。 私には、あいつの運命から救ってやることはできない。 子を授ける事が果たして彼女にとって幸せなのかも分からない。 けれども。 彼女が幸せそうに笑うならば。 せめて一時の安らぎを、共に共有しよう。 「焼津様、この子の名は梢と名づけようと思います、どう、ですか?」 「ああ、いい名前だ。のびのびとした暖かな生気を感じる名前だな。」 「本当ですか?焼津様にそういっていただけると嬉しいです!ほら、梢ってば焼津様にそっくり。」 「おやおや、私には薫の意思の強さをこの子にも感じるがな?」 「きっと、いい子になりますよ、ね?」
20071205 戻る |